広告の未来(イコールの発想)

インターネットの時代に「広告」はどのように変化していくのか。
橘川幸夫 2024.11.05
誰でも

(1)広告構造の変化

 新しい商品やサービスを考えた時に、そのことわ告知・拡散するためには広告が必要である。大量生産モデルが開始した近代社会において、広告は大きな役割を果たした。しかし、私たちの歴史が、リアル現実だけしかなかった近代社会と違って、情報環境の中での新しい生活・産業を考えなければならない時に、旧来型の広告・宣伝方式は無効になってくる。

 情報社会が不完全な時代、社会の情報回路がスカスカな時代は、発信するための機能(新聞社、出版社、放送局など)が大きな権力を持っていた。こうした情報権力は、大量の広告を社会全体に届けた。広告の価値は、どれだけ大量に宣伝ビラを配布したかで計られた。

 ちなみに雑誌の広告料というのは、1枚のチラシを配布するコストで計算される。例えば1枚のチラシを印刷して配布するのに単価が5円だと計算すると、10万部の雑誌の1頁あたりの広告料は50万円となる。折込広告も同じである。テレビの広告料もどれだけチラシを配ったかを視聴率で計算をする。

 出版社の雑誌が部数の拡大にこだわったのも、実部数より上乗せして媒体資料に公称部数を掲載したのも、それが広告料に反映するからだ。情報牧歌時代のアナログな時代風景である。

 やがて情報通信の時代が訪れ、メディアの一極集中は、インターネット状況によって拡散されていった。最初に旧来型の広告システムに疑問を持ったのは通販業界である。通販にとってはイメージの拡散よりも、一人の顧客を獲得するために広告をうつのだから、どれだけ露出したかより、どれだけ客を獲得したかの、CPO(Cost Per Order)が重要になる。それは通販を申し込んだ数で分かるから、新聞や雑誌の部数は関係ないのである。

 インターネットは、アフリエイトなどの成果報酬型のマーケティングシステムが登場したが、以前として旧来型のチラシ大量散布型の広告が大きなシェアを占めていて、コンテンツ・プロバイダーの側も旧来型の広告モデルでしか、事業構造を作れない人が多く、せっかく良いコンテンツなのに、煩わしい強制広告がアクセスのやる気を失せさせてる。

(2)企業案件モデル

 インターネットが登場した時、私は「インターネット・ビジネスモデルからインターネットモデル・ビジネス」という言葉を提案した。インターネットは近代のビジネスを超えるP2P世界なので、旧来のビジネス構造を持ち込んでも無理がある。しかし、そこは現実の未来世界なので、インターネットで起きていることを現実に持ち込めばビジネスになる、という発想だ。

「シェア」「リンク」「発信者負担」「P2P」など、インターネット上のキーワードを現実世界に持ってくればよいのだと思う。

YouTubeは、個人放送局である。多様な人材が多様なテーマで放送番組を作っている。テレビ局のように背後に親方のような権力者がいて、タレントや出演者が、親方が用意した舞台で演じるのとは違う。

 そこでも通常の広告モデルやアフリエイトはあるが、興味を持っているのは「企業案件」というものである。いわゆる「タイアップ広告」だが、雑誌やテレビのようなメディア枠のタイアップと、個人放送局のタイアップは意味合いが違う。

 YouTubeの視聴者は、YouTuberに対するファンや関心があるので、企業案件が入ったとしても、ファンの投げ銭の大口のような感覚で受け取れる。YouTuber本人が番組化して宣伝するので、内容も、当事者と無関係な制作プロダクションが作るような作品ではない。例えば、13か国語を話す多言語YouTuberであるKAZUの番組では、海外アクセスを多用する人に必要なVPNの企業案件が入ったりする。

 ということで、「イコール」は、個人編集長によるコミュニティ生成マガジンで、個人で全部やるのではなく、仲間たちと雑誌を作るのだが、感覚的には編集長は、YouTuberの感覚に近い。

 ならば、ここは「インターネットモデル・ビジネス」として企業案件を募集する。部数としては広告の価値は薄いが、広告主(企業でも個人でも可)とのコラボレーションで編集記事を作りたい。

 やってみないと分からないが、とりあえず、広告主を募集する。詳細は相談。

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