安藤哲也くんの構想

時代のテーマを追い続けてきた安藤哲也くんの新しいテーマ「シェア書店」はこれからどうなるのか。
橘川幸夫 2023.09.05
誰でも

(1)前振り

 今年になって最も注目している人はシェア書店「TAKIBI」を開店した安藤哲也くんです。安藤くんとは80年代にUPUという会社に彼が入社した頃からの知り合い。UPU(ユニバーシティ・プレス・ユニオン)は、京大など関西の大学新聞会のOBたちが作った会社で、東大新聞会のOBたちが作ったリクルートの次の世代になります。私は社員ではなかったのですが、なぜか客分扱いで、小川町の事務所時代から出入りしていて、御茶ノ水の事務所に移転した時は乾杯の発声をした(笑)。

 なかなかイキの良い社員が集まって、リクルートのライバルとして採用情報の一角を築いた。また「エイスイア」「id」などの世界のカルチャーマガジンの版権を買って日本版を出すなど80年代に暴れまくっていた。私のところにいた石田陽子とかが合流したりした。創業メンバーも若手社員もユニークな奴が多く、頻繁に交流していた。そこの新人社員で出会ったのが、安藤哲也と田口ランディである。

 UPUは、バブル時に自社ビルを購入した頃から衰退していまったが、その後のインターネット業界において、多くの人材を輩出した。名前をあげるときりがないが(笑)

 それで安藤くんとは、間欠的に会っていたのだが、会うたびに「楽天のオンライン書店」の事業責任者になっていたり、福田敦さんと一緒に現れてタイガーマスク基金を始めたり、ファザーリングを始めて猛烈に忙しくなったり、大野誠一くんと一緒にライフシフトジャパンを作ったりと、目まぐるしい(笑)。

 そして、「TAKIBI」である。ようやく、真正面で組めそうな案件が登場した。

(2)地域とシェア書店

 安藤哲也くんが「TAKIBI」というシェア書店を作りました。

彼がやろうとしているのは、無書店地域に書店を作るという活動です。

ブックストア・ソリューション・ジャパンという団体を作りました。

やり方は以下。

地域の無書店市町村に「本屋を作ろう」と呼びかける。

廃業した地域の本屋さんを行政の予算でリノベする。

運営は安藤くんのNPOが行う。

東京などでは書店が閉店になって、書店員が失業する。転職するのだが「本が大好きで本屋の店員が転職と思っている人」はたくさんいるが、

普通の事務や営業ではものたりない。そういう人たちを安藤くんのところで登録してもらっている。

それで、地方の書店が行政の力で再生したら、都会の元書店員を店長にして移住してもらう。

こちらも移住の予算から3年間給与保証などの条件を検討。

シェア書店は、そのための実験であるが、安藤くんの構想は、「通常の新刊書店+シェア書店」をセットにした業態。

新刊は普通の本屋で、読み終えた人はシェア書店で地域に還元。

安藤くんは全国の行政や大企業にパイプをもっているのは、ファザーリングという父親の育児参加の先駆者だからです。

自分の地域で「新しい書店」を作りたいと思っている人、ご検討ください。

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