シェア書店・棚主のはじめかた

ChatGPTが猛威を振るうなか「もう、本なんかいらないくねぇ」という一方の声に対して、全国各地でシェア図書館・シェア書店の動きが大きな潮流になっています。自分でお金を払って棚を借りて、地域の人に自分の本を読んでもらったり売ったりする動きは、間違いなく新しい。何が新しいのかを、参加型メディア一筋半世紀の橘川幸夫が、実際に棚主になって体験・実感したことを報告していきます。
橘川幸夫 2023.07.02
誰でも

1.ことはじめ

 私がはじめて棚主になったのは、昨年(2022年)でしたか、近所の銭湯に「フロナカ書店」というのが出来て、試しに棚を借りてみた。銭湯の待合室にシェア書店を作るという画期的なものであった。すぐに「深呼吸書店」を開始しました。

 こういう新しい心意気には応援したくなるのだが、そのあとクレジット詐欺にあいました。被害は食い止めたのですが、Amazonの名義で数百万の買い物がされて、こちらのクレジット利用制限を越えて請求されてました。こちらの買い物が出来ないので、おかしいなと思いクレジット会社に確認したら、怪しい取引が発覚。Amazonに確認したら、そういう請求はないとのこと。だいたいなんで利用制限以上の買い物が行われてクレジット会社がスルー出来たのか分かりませんが、とにかく古いカードは破棄して、新しいカードに切り替えました。そのドサクサで、フロナカ書店の会費引き落としが出来てなくて、停止してしまいました。

 実施期間は2ヶ月くらいでしたが、売上は5030円。可能性は感じました。このフロナカ書店、本の代金は番台にいくんです。

 要するに「本屋に人を集める」のではなく、「人が集まるところに本屋をやればよい」のではないかと思ったわけですね。素晴らしい。

2.私と神保町

 しかし、本といえば神保町ですよね。世界に誇る古本屋街で、最近は外人のYouTuberも神保町ウォークしている人が見受けられる。

 私は生まれも育ちも東京新宿の四谷若葉町で、小学生の頃、四谷から神保町まで都電が走っていて、それにのって家族で神保町に食事に行ったり、帰りにパチンコ屋に行ってました。祖父の妹が九段で芸者さんやってて、置いてからは、三味線のお師匠さんとして芸者さんに教えていたので、九段経由で行くこともありました。

 パチンコ屋は人生劇場。その人生劇場は、今は@ワンダーの古本屋になっています。そういう環境でしたので、神保町は身近な遊び場で、中学生くらいから古本屋をまわりはじめました。最初にはまったのは、「教師用の教科書」が揃ってる古本屋をみつけたから。教科書会社が生徒に配る教科書とは別に、こまかい指導法が記入されている、指導用教科書というのがあるんです。先生のアンチョコですね。自分が使っている国語の教科書の教師用を手にいれたら、授業は、教科書には書いてないアンチョコの部分を先生が話していた。更に、試験問題例というのがあって、そっくりそのまま同じものが出た(笑)。ビビリました。見てはいけないものを見てしまった感じです。

 しかし、誘惑には勝てずに、全教科揃えようと通ったのですが、なかなか見つかりませんでした(笑)。合わせて、その古本屋は数学パズルやクイズみたいな古本が揃っていて、それにもはまりました。

 やがて高校に行って、山岳部に入るのですが、山の本はだいたい神保町を散策して集めました。古い「岳人」や「山と溪谷」などのバックナンバーの記事に、高揚したものです。

 私の記憶では、てんぷら「いもや」が出来たのは、私が高校生の時だから、60年代後半ではないでしょうか。駿台下に出来た天ぷらやは、それまで高級料理だった天ぷらを学生でも食べられるようになりました。家族でもよく行きました。

 すいません「棚主入門」のつもりが、まえがきが長すぎる(笑)

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