シェア書店・棚主のはじめかた(6)万引き対策
シェア書店の棚主も書店経営者のはしくれですから、書店経営の課題も知っておくのがよいと思います。書店経営者が頭を抱えるのは「万引き」です。書店の万引き被害額は、年間約200億円余りだと言われています。通常の書店は「委託販売」なので、取次から送られてきた本を、売れた分だけ支払い、売れ残りは返品します。この委託販売システムによって、書店は少ないマージンでもやってこれたのです。ところが万引きに合うと、書店としては返品する本がないわけですから、データ的には「売れた」こととなってしまいます。単に本が盗まれただけではなく、責任は書店になってしまいます。被害の金額は書店の年間売上の1から2%と言われていて、これ以上増えたら商売にならない。
出版業界でも万引き対策が喫緊の課題となっています。だいぶ前からRFID(Radio Frequency Identification)という電子タグを使った万引防止システムが話題になっていますが、誰が費用負担するのかでもめてしまいました。原理的には印刷用紙そのものにRFIDを埋め込む印刷技術が完成しているので、実現すれば万引防止、不法な転売なども出来なくなりますが、まだ高価格なので実現は先になるでしょう。
昨年、講談社と小学館、集英社と丸紅で書籍をRFIDで管理するための「PubteX(パブテックス)」という企業が立ち上がりました。
ちなみに「万引防止」は大きな市場となっているので、システムを開発している業界団体「日本万引防止システム協会」も出来ています。
時代の流れは、システム管理の方向ですが、当分は実現しそうもありません。現実的に、知り合いのシェアラウンジみたいなところでも「万引き対策」がテーマになっています。こちらは監視カメラもバッチリ設置してあるので、画像を見れば犯人を特定できそうですが、特定して探し出すのは、なかなか手間暇かかりそうです。ネットに晒すのも問題が大きくなりすぎます。
さまざまな業種で無人店舗が広がっていて、書店でも始まっています。
しかし、手作りの店舗運営である「シェア書店」はシステムに費用をかけられません。まして、一棚主として対応策はないでしょう。
万引についての私の考えと対策はこうです。
◇お金がないので「盗んででも読みたい」という気持ちがあるなら、連絡をください。事情に納得できれば、本は差し上げます。
◇問題は、払えるお金があるのに盗んだり、読みたくもないのに転売目的で万引する連中です。オークションや不用品売買サイトが出来たので簡単に盗品を現金化出来るようになりました。
◇対策として、転売防止をするために、本には橘川の蔵書印をおすことにしました。自著本はなるべくサインをいれます。
(図書館サービス計画研究所の仁上幸治さんと話していて、図書館は以外と万引が少ないとのことです。その理由は、すべての本に図書館の蔵書印が押されていて、転売しにくいからのようです)。
橘川の自著や古書は「生前贈与」のコンセプトで書棚を作っていきますので、読んでくれる人に渡していきたい。ご了承ください。
真崎・守が篆刻してくれた「幸」の印鑑です。このハンコか「橘川蔵書印」とあるハンコのどちらかを押します。
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